タイ語は声調言語であり、音節の構造と声調が語彙の意味に大きな影響を与えます。以下に、タイ語音韻論の主要な特徴を紹介します。
1. 音節構造
タイ語の音節は以下の構成要素で成り立っています:
(頭子音) + (前母音) + 主母音 + (末子音) + 声調
• 頭子音(子音の初め):音節の冒頭に現れる子音。
• 前母音:主母音の前に現れる半母音。
• 主母音:音節の核となる母音。
• 末子音:音節の最後に来る子音。
• 声調:音の高さや抑揚。
2. 子音(頭子音と末子音)
頭子音
タイ語の頭子音は21種類あり、調音点と調音法に基づき分類されます。
主要な頭子音の分類
• 両唇音:/p/, /ph/, /b/, /m/
• 唇歯音:なし
• 歯音:/t/, /th/, /d/, /n/
• そり舌音:/r/, /l/
• 硬口蓋音:/ch/, /j/, /y/
• 軟口蓋音:/k/, /kh/, /ng/
• 声門音:/ʔ/(無音)
末子音
末子音には制限があり、次の8種類に限られます:
• 平音節:-i, -u, -m, -n, -ŋ
• 促音節:-k, -t, -p
3. 母音
母音は音節の中核を構成し、単母音と二重母音があります。母音は長母音と短母音に区別されます。
単母音
短母音 長母音
/a/ /aː/
/i/ /iː/
/ɯ/ /ɯː/
/u/ /uː/
/e/ /eː/
/ɛ/ /ɛː/
/o/ /oː/
/ɔ/ /ɔː/
二重母音
二重母音は主母音に半母音が加わる形で構成されます:
• /ia/, /ɯa/, /ua/
4. 声調
タイ語には5つの声調があり、語の意味を区別する役割を果たします。
1. 平声(中声):一定の高さで平らに発音。例: กา [kaa](カラス)
2. 低声:低い高さで平らに発音。例: ก่า [kàa](古語の「老い」)
3. 降下調:高い位置から急降下する音。例: ก้า [kâa](勇敢な)
4. 高声:高い高さで平らに発音。例: ก๊า [káa](笑い声(ハハ)/強調語)
5. 上昇調:低い位置から上昇する音。例: ก๋า [kǎa](来る(北部方言))
声調は声調記号を用いて表記されます。
5. 音韻変化
声調変化
タイ語では文脈や話者の感情により声調が変化する場合があります。これを音調変化(intonation change)と呼びます。
母音の変化
話し言葉では、一部の母音が簡略化されたり変化したりすることがあります。たとえば、長母音が短母音に縮むケースなどがあります。
6. アスピレーションと無気音
タイ語の頭子音には無気音(例: /k/)と有気音(例: /kʰ/)の区別があり、これが語彙の意味を区別する重要な要素です。
例
• กา [kaː](カラス)
• คา [kʰaː](残る)
7. 転調規則
タイ語の声調は、頭子音、母音の種類、末子音の種類に基づいて決定されます。タイ文字には3つの音価クラス(高子音、中子音、低子音)があり、それぞれの組み合わせによって音節の声調が変わります。